全 日 本 漢 詩 連 盟   The All Nippon Classical Chinese Poetry Association
   
   
漢 詩 作 法 (中級者)   
  
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第1回  冒韻について(起句・承句)
  窪寺 貫道
 
 第2回  冒韻について(転句・結句)
  窪寺 貫道
 

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         漢詩の作り方(中・上級者向)第二回

        冒韻について 其の二       窪寺 貫道

 前回、七言絶句の起句と承句の冒韻を紹介したが、今回は転句と結句の冒韻を『唐詩選』(岩波文庫)と『唐詩三百首新注』(上海古籍出版社)より拾った。先ず転句の冒韻から。

『唐詩選』より

     邙 山   邙山     初唐  沈佺期(しんせんき) (下平声庚韻)

   北邙山上列墳塋    北邙山上 墳塋(つら)なり

   萬古千秋對洛城    万古千秋 洛城に対す

   中日夕歌鐘起    城中日夕 歌鐘起るも

   山上惟聞松柏聲    山上 惟だ聞く松柏の声

 

 この詩は拗体(ようたい)(おうたいとも言う)で転・結の平仄が正挌とは逆になっている。「」が承句の韻字で、これを転句の一字目に使用し尻取りにした。又「山上」も畳用だが二字共に流石に上手に使われている。有名な詩なので、解説の必要はあるまい。

 次は上記両方の本に採られている詩から。

 

      閨 怨    閨怨(けいえん)   盛唐  王昌齡  (下平声尤韻)

   閨中少婦不知愁    閨中の少婦 愁を知らず 

   春日凝粧上翠樓    春日 粧を凝らして 翠楼に上る

   忽見陌楊柳色      忽ち見る陌頭(はくとう) 楊柳の色

   侮敎夫壻覓封侯    ()ゆらくは()(せい)をして封侯を(もと)めしを

 この詩も有名であるから解説するまでも無い.承句の「粧」は「妝」に,結句の「壻」は「婿」に同じ。念の為。「」が尤韻である。

 次の二首は『唐詩三百首新注』より

     寄揚州韓綽判官  揚州の韓綽判官に寄す  晩唐 杜牧 (下平蕭韻)

   靑山隱隱水迢迢    青山隠々 水迢々

   秋盡江南草木凋    秋尽き 江南 草木凋む

   二十四明月夜    二十四橋 明月の夜

   玉人何處敎吹簫    玉人何れの処にか 簫を吹かしむるや

 この詩は「二十四橋」を詠じた詩としては最も有名な詩であるが,「」が固有名詞であるから冒韻でも止む得ない処である。この杜牧の詩は『唐詩選』には採られていないが良く知られた詩であり,承句の六字目が「木」ではなく「未」になっているテキストもある。結句は「玉人何れの処にか 吹簫を教うるや」と読むのが普通であるが,この『新注』本の解説に「教 ,使。」とあるので,敢えて使役に読んでみた。意味としては使役に読む方が面白い。

     瑤瑟怨   瑤瑟怨    晩唐  温庭(いん) (下平声庚韻)

   冰簟銀牀夢不成    氷(てん) 銀牀 夢成らず

   碧天如水夜雲輕    碧天水の如く 夜雲軽し

   雁()遠過瀟湘去    雁声遠く瀟湘を過ぎ去る

   十二樓中月自明   十二楼中 月 自から明らかなり

 この詩は閨怨の詩である。意味は次の通り。

 氷のような涼しいたかむしろ(○○○○○) に横になっても,月光に照らされたすのこ(○○○)のベッドに横になっても睡れない。晴れた夜空を雲が軽やかに行く。渡る雁が声を残して瀟水や湘水の方へ飛び去った。崑崙にある仙宮の十二楼とも言うべきたかどの(○○○○)にいる私の怨みも知らず,昔からの侭に明るい月が照らしている。         

 転句は韻を踏まないので冒韻の字を自由に使えるとされているが,使用例は少なかった。

 次は結句の冒韻を見よう。最初の詩は両方の本にある。


      涼州詞    涼州詞    盛唐 王翰 (上平声灰韻)

   葡萄美酒夜光杯    葡萄の美酒 夜光の杯

   欲飮琵琶馬上催    飲まんと欲すれば 琵琶馬上に催す

   醉臥沙場君莫笑    酔うて沙場に臥す 君笑うこと()かれ

   古()征戰幾人回     古来 征戦 幾人か(かえ)

 この詩も非常に有名な詩だから解説の要はあるまい。一つ注意しておきたいのは「沙場」の意味である。岩波文庫の方は単に「砂漠」としてあるが不可。本当は「砂漠の戦場」で,この方がこの詩の深刻さが分かる。

 もう一首見よう。『新注』より

     遺壞     懐を()る   晩唐 杜牧 (下平声庚韻)

   落魄江湖載酒行    江湖に落魄して 酒を載せて行く

   楚腰纎細掌中輕    楚腰繊細 掌中に軽し

   十年一覺揚州夢    十年一たび覚む 揚州の夢
   (  ○)得靑樓薄倖名     (か)ち得たり 青楼薄倖の名

 

 この詩も良く知られているので解説を省略する。

 以上,転句と結句の中の冒韻を見てきたがこの他にあったのは.両方の詩集の中で八首に過ぎない。漏れた詩があるかも知れないが、傾向を知る為なので精査はしなかった。

 前回と今回で調べた結果、冒韻は「不可ではないが、積極的には使用しない方が良い」というのが筆者の感想である。

                  以上  

  

 

 

漢詩の作り方(中/上級者)第1

        冒韻について      窪寺 貫道

 
 最近、冒韻について誤った認識を持っている人が、筆者の教室などに四人いることを知った。何故そのような認識を持ったか原因は不明だが、筆者の周辺だけで四人も居るということは他にも何人かがその様に誤解しているのではないかと思い、誤りを解くために書いてみたい。

 先ず冒韻とは何か。それは一首の詩の中の脚韻に使った字のグループに属する字を、脚韻以外の場所に使うことである。例えば「一東」に属する「東」とか「中」あるいは「風」を脚韻に使った場合、「一東」に属する他の字を他の場所に使うことを指す。これを「不可」とする作詩のルールはない。特に絶句の場合、五言では起句と転句、七言では転句は韻を踏まないので、各々の句に冒韻に該当する字を使うのは全く差支えない。

 それでは、他の起句・承句・結句につかうのはどうか。これは嫌う人が居るという程度である。「起・承句には使わない方が良い」とか、「各句の第一字目には使うな」とか言う人が居るが、「絶対不可」ではない。若し第一字目に使うことを禁止したら連環体の詩が出来なくなる。因みに連環体詩とは各句の一番下の字を次の句の一番上に使用し、最後の句の一番下の字を第一句の一番上に使用するという、所謂「尻取り」をする一種の遊びであり、作るには高い技量が必要である。

 更に、全国的に行われている漢詩大会でも、冒韻を瑕疵とはしないよう、審査基準に内規として明記されている。ただし二字以上は止めた方が良い。最後に冒韻の例を紹介する。

 先ず、起句の冒韻から二首。(○印が冒韻箇所)

 

    別薫大        薫大に別る       盛唐  高適  (上平声文韻)

   千里黄()白日曛   千里の黄雲 白日(くん)

   北風吹雁雪紛紛   北風 雁を吹いて 雪 紛々

   莫愁前路無知己   愁うる()かれ 前路 知己無きを

   天下誰人不識君   天下()が人か 君を識らざらん

 

 詩の内容は難しくない。起句の四字目の冒韻の字を使っていることに注目したい。これは詩人がわざ(◎◎)()使ったといえる。つまり、七言絶句は上の四字と下の三字の間に一つの段落があるので、上の四字が一つの句になり、下の三字の句と対応しているようにしたのではないか。換言すれば、全体で形の上では四句の絶句を、起句の最初の四字目で韻を踏み五句にしたと言えるのではないかと考えられる。同じように起句の四字目で冒韻の字を使っている例が幾つかある中の一首を紹介しよう。

  

       乞巧        乞巧       晩唐   林傑  (下平蕭韻)

   七夕今()看碧霄   七夕の今宵 碧霄を看る

   牛郎織女渡河橋   牛郎 織女 河橋を渡る

   家家乞巧望秋月   家々 乞巧し 秋月を望む

   穿盡紅絲幾萬條   穿(うが)ち尽くす 紅糸 幾万条

 転句と結句が一寸分かり難いかと思うので解説すると、天上の景に対して地上では「どの家でも(女子が)針仕事の上達を願い秋の月(旧暦の七月は秋)を眺めながら針の穴に幾万本の紅い糸を通している。」ということである。又、四字目だけでなく、他の場所で冒韻の字の使用もある。例えば次の詩がある。

 

     題畫梅         画梅に題す      清 李方膺  (下平声麻韻)

    花此日未生芽   梅花 此日 未だ芽を生ぜず

   旋轉乾坤屬畫家   乾坤を旋転するは画家に属す

   筆底春風揮不盡   筆底の春風 揮いて尽きず

   東塗西抺總開花   東に塗り西に(なす)り 総て花を開く

 

 梅の画を詠んだ詩である。意味は「今は梅の芽も出ていない時なのに、画家は自由自在に画を描く。即ち、春風が吹き止まない中で彼方(あちら)此方(こちら)に花を咲かせた。」である。

 次は承句での冒韻の例を二首。

 

     辺詞         辺詞       初唐 張敬忠  (上平声支韻)

  五原春色舊來遲   五原の春色 旧来遅し

  二月()楊未挂絲   二月 垂楊 未だ糸を挂けず

  即今河畔冰開日   即今 河畔 氷 開く日

  正是長安花落時   正に是れ長安 花落ちる時

 

    春雨到筆庵      春雨筆庵に至る    江戸 廣瀬旭莊  (下声麻韻)

  菘圃葱畦取路斜   菘圃葱畦 路を取ること斜めなり

  桃()多處是君家   桃花多き処 是れ君が家

  晩來何物敲門至   晩来 何物か門を敲いて至る

  雨與詩人與落花

 こちらは、同字重出でもあり、真似はしないよう。

                                        終

 
  
 
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