(2007年11月19日)

 小学生の「日本語」教科書に、杜甫や李白の漢詩がいっぱい入っている。それだけでも驚きだ。それを実現した東京・世田谷区の「日本語教育特区」とは何か。くわしく聞いた。

《インタビュー》
美しい日本語へ

世田谷区「日本語教育特区」の試み
世田谷区教育長 若井田 正文(聞き手)岡崎満義

 平成16年に「日本語教育特区」となった世田谷区が、この4月、小学生用に3冊の教科書「日本語」を作った。(中学生用としては「哲学」「表現」の2冊。来年「日本文化」が加わって、小中全6冊のシリーズが完成する

 「日本語」については、「会長通信で、石川忠久会長が紹介されているように、俳句、和歌、詩など韻文が多く取り入れられており、珍しく音読志向の教科書である。とくに注目されるのは、小学1・2年生用の教科書から、漢詩が出てくることだ。学校教育の中で、漢詩文が軽視されている現在、これは画期的な出来事といえるだろう。

 この「日本語」プロジェクトの中心になった若井田正文・世田谷区教育長に、なぜ今「日本語」なのかについて、インタビューをした。       

   

    若井田正文氏         教科書

─ 今、文科省はじめ。世の中の流れは英語の早期教育の方向にシフトしているようですが、その中で日本語に光をあて、世田谷区としてあえて「日本語教育特区」として進んでいこうと思ったのはなぜですか。大きな抵抗はなかったですか。

若井田 平成15年から「美しい日本語を世田谷の学校から」という取組みを全区立小中学校95校、幼稚園11園でつづけて、下地を作ってきました。この取組みは、大賛成という人が断然多かったですね。父母の方々もみんな子供の言葉の乱れに、頭を痛めていた感じです。区議会議員の方々からも、教育委員会だけでなく、区全体の活動としてやったら、という支援の声が多かった。

平成16年に私は教育長になって、日本語教育特区を内閣府に申請したのですが、そのとき文科省にも適切かどうか、一応了解を得ておくためたずねました。すると、なぜ国語教育特区にしないのか、と言われたのです。文科省で日本語というと、外国人のためのもの、特別な日本語教育なんですね。

総合的な学習の時間を使って「日本語」を小学生は週1回、中学生は週2回やるので、本来の総合的学習の狙いもきちんと担保できるか、といわれました。指導主事、課長が行って説明してもなかなか納得してくれません。私が出かけて、もちろん国語的なこともやるが、小学校1年生から古典を入れ、漢字の制限はなしでやります、ですから、国語の教育指導要領とは違う。

その範ちゅうからはみ出す、また「三・四年生」用の「日本語」教科書の中には、世田谷の地名の由来がでてきます。これはどちらかといえば、社会科の郷土学習です。また、中学では数学を言葉で考えよう、というのもあったり、この内容は国語だけでなく社会、数学、理科など横断的な内容なので、総合的な日本文化の学びとして位置づけたい、それで「日本語」と名付けたと説明しました。

それでやっと分かってもらいました。今は文科省の方にも賛成していただいています。今後の学習指導要領の改訂では、一つのキーワードは言葉だと中教害で答申されていますが、ある人の話では、世田谷の日本語教育特区の影響が大きい、ということです。

もともと、「美しい日本語を世田谷の学校から」の取組みを始めたのは、世田谷の学校から全国を変えたい、という強い願いをもっていたので、「世田谷の学校から」としましたし、いろんな形で全国に広まっていけばうれしい、と思っています。