(2007年11月19日)

教科書「日本語」に掲載された漢詩25首

<日本語一・二年>

  尋胡隠君  胡隠君[こいんくん]を尋[たず]  高啓
渡水復渡水 [みず]を渡[わた]
[また]た 水[みず]を渡[わた]
看花還看花 [はな]を看[み]
[ま]た 花[はな]を看[み]
春風江上路 春風[しゅんぷう] 江上[こうじょう]の路[みち]
不覚到君家 [おぼ]えず
[きみ]が家[いえ]に到[いた]

    絶句
  絶句[ぜっく]  杜甫
遅日江山麗 遅日[ちじつ] 江山[こうざん][うるわ]しく
春風花草香 春風[しゅんぷう] 花草[かそう][かんば]
泥融飛燕子 [どろ][と]けて 燕子[えんし][と]
沙暖睡鴛鴦 [すな][あたた]かにして
鴛鴦[えんおう][ねむ]

   春曉
  春曉[しゅんぎょう]  孟浩然
春眠不覚曉 春眠[しゅんみん] 曉[あかつき]を覚えず
処処聞啼鳥 処処[しょしょ] 啼鳥[ていちょう]を聞[き]
夜来風雨声 夜来[やらい] 風雨[ふうう]の声[こえ]
花落知多少 [はな][お]つること 知[し]る多少[たしょう]
  

  竹里館
  竹里館[ちくりかん]  王維
独坐幽篁裏 [ひと]り坐[ざ]す 幽篁[ゆうこう]の裏[り]
弾琴復長嘯 [こと]を弾[だん]じて
[ま]た長嘯[ちょうしょう]
深林人不知 深林[しんりん] 人[ひと][し]らず
明月来相照 明月[めいげつ][き]たって 相[あい][て]らす

    静夜思
  静夜思[せいやし]  李白
牀前看月光 牀前[しょうぜん]
月光[げっこう]を看[み]
疑是地上霜 [うたが]うらくは 是[これ]
地上[ちじょう]の霜[しも]かと
挙頭望山月 [こうべ]を挙[あ]げて
山月[さんげつ]を望[のぞ]
低頭思故郷 [こうべ]を低[た]れて
故郷[こきょう]を思[おも]


<日本語三・四年>

      江南春  江南[こうなん]の春[はる]  杜牧
千里鶯啼緑映紅 千里[せんり][うぐいす][な]いて
[みどり][くれない]に映[えい]
水村山郭酒旗風 水村[すいそん]山郭[さんかく]
酒旗[しゅき]の風[かぜ]
南朝四百八十寺 南朝[なんちょう]
四百八十寺[よんひゃくはちじゅうじ]
多少樓台煙雨中 多少[たしょう]の楼台[ろうだい]
煙雨[えんう]の中[なか]

    客中初夏
  客中[かくちゅう]初夏[しょか]    司馬光
四月清和雨乍晴 四月[しがつ]清和[せいわ]
[あめ][たちま]ち晴[は]
南山当戸転分明 南山[なんざん][こ]に当[あ]たって
[うた]た分明[ぶんめい]なり
更無柳絮因風起 [さら]に柳絮[りゅうじょ]
[かぜ]に因[よ]って起[お]こる無[な]
惟有葵花向日傾 [た]だ葵花[きか]の 日[ひ]
[むか]って傾[かたむ]く有[あ]るのみ

    秋風引
  秋風[しゅうふう]の引[いん]  劉禹錫
何処秋風至 何処[いずこ]よりか
 秋風[しゅうふう][いた]
蕭蕭送雁群 蕭蕭[しょうしょう]として
 雁群[がんぐん]を送[おく]
朝来入庭樹 朝来[ちょうらい]
 庭樹[ていじゅ]に入[い]るを
孤客最先聞 孤客[こきゃく]
 最[もっと]も先[さき]んじて聞[き]

  独坐敬亭山
 [ひと]り敬亭山[けいていざん]に坐[ざ]  李白
衆鳥高飛尽 衆鳥[しゅうちょう]
 高[たか]く飛[と]びて尽[つ]
孤雲独去閑 孤雲[こうん]
 独[ひと]り去[さ]って閑[かん]なり
相看両不厭 [あい][み]
 両[ふた]つながら厭[いと]わざるは
只有敬亭山 [ただ]敬亭山[けいていざん]
 有[あ]るのみ

    鹿柴
  鹿柴[ろくさい]  王維
空山不見人 空山[くうざん] 人[ひと]を見[み]
但聞人語響 [た]だ人語[じんご]の響[ひび]きを聞[き]
返景入深林 返景[へんけい] 深林[しんりん]に入[い]
復照青苔上 [ま]た照[て]らす 青苔[せいたい]の上[うえ]

 送元二使安西

   元二[げんじ]の安西[あんせい]に使[つか]いするを送[おく]
   
王維
渭城朝雨潤軽塵 渭城[いじょう]の朝雨[ちょうう]
 軽塵[けいじん]を潤[うるお]
客舎青青柳色新 客舎[きゃくしゃ]青青[せいせい]
 柳色[りゅうしょく][あらた]なり
勧君更尽一杯酒 [きみ]に勧[すす]
 更[さら]に尽[つ]くせ一杯[いっぱい]の酒[さけ]
西出陽関無故人 西[にし]のかた陽関[ようかん]を出[い]づれば
 故人[こじん][な]からん

 早発白帝城
 [つと]に白帝城[はくていじょう]を発[はっ]  李白
朝辞白帝彩雲間 [あした]に辞[じ]
白帝[はくてい]彩雲[さいうん]の間[かん]
千里江陵一日還 千里[せんり]の江陵[こうりょう]
一日[いちにち]にして還[かえ]
両岸猿声啼不住 両岸[りょうがん]の猿声[えんせい]
[な]いて住[や]まざるに
軽舟已過万重山 軽舟[けいしゅう][すで]に過[す]
万重[ばんちょう]の山[やま]

   望廬山瀑布
 廬山[ろざん]の瀑布[ばくふ]を望[のぞ]  李白
日照香炉生紫煙 [ひ]は香炉[こうろ]を照[て]らして
 紫煙[しえん]を生[しょう]
遥看瀑布挂前川 [はる]かに看[み]
 瀑布[ばくふ]の前川[ぜんせん]に挂[か]かるを
飛流直下三千尺 飛流[ひりゅう]直下[ちょくか]
 三千尺[さんぜんしゃく]
疑是銀河落九天 [うたが]うらくは是[これ] 銀河[ぎんが]
 九天[きゅうてん]より落[お]つるかと

    山行
  山行[さんこう]  杜牧
遠上寒山石径斜 [とお]く寒山[かんざん]に上[のぼ]れば
 石径[せっけい][なな]めなり
白雲生処有人家 白雲[はくうん][しょう]ずる処[ところ]
 人家[じんか][あ]
停車坐愛楓林晩 [くるま]を停[とど]めて坐[そぞ]ろに
 愛[あい]す 楓林[ふうりん]の晩[くれ]
霜葉紅於二月花 霜葉[そうよう]は二月[にがつ]の花[はな]よりも
 紅[くれない]なり

   黄鶴樓送孟浩然之広陵

     黄鶴楼[こうかくろう]に孟浩然[もうこうねん]
     広陵[こうりょう]に之[ゆ]くを送[おく]
  李白
故人西辞黄鶴楼 故人[こじん]
西[にし]のかた黄鶴樓[こうかくろう]を辞[じ]
煙花三月下揚州 煙花[えんか]三月[さんがつ]
揚州[ようしゅう]に下[くだ]
孤帆遠影碧空尽 孤帆[こはん]の遠影[えんえい]
碧空[へきくう]に尽[つ]
唯見長江天際流 [ただ][み]る 長江[ちょうこう]
天際[てんさい]に流[なが]るるを


<日本語五・六年>

    偶成  偶成[ぐうせい]  朱熹
少年易老学難成 少年[しょうねん][お]い易[やす]
 学[がく][な]り難[がた]
一寸光陰不可軽 一寸[いっすん]の光陰[こういん]
 軽[かろ]んずべからず
未覚池塘春草夢 [いま]だ覚[さ]めず
 池塘[ちとう]春草[しゅんそう]の夢[ゆめ]
階前梧葉已秋声 階前[かぜん]の梧葉[ごよう]
 已[すで]に秋声[しゅうせい]

   秋日
  秋日[しゅうじつ]  耿湋
返照入閭巷 返照[へんしょう] 閭巷[りょこう]に入[い]
憂来誰共語 [うれ]え来[き]たって
[だれ]と共[とも]にか語[かた]らん
古道少人行 古道[こどう] 人[ひと]の行[ゆ]くこと少[まれ]なり
秋風動禾黍 秋風[しゅうふう] 禾黍[かしょ]を動[うご]かす

   芙蓉楼送辛漸

     芙蓉楼[ふようろう]にて辛漸[しんぜん]を送[おく]
      王昌齡
寒雨連江夜入呉 寒雨[かんう][こう]に連[つら]なりて
[よる][ご]に入[い]
平明送客楚山孤 平明[へいめい][かく]を送[おく]れば
楚山[そざん][こ]なり
洛陽親友如相問 洛陽[らくよう]の親友[しんゆう]
[も]し相[あい][と]わば
一片冰心在玉壺 一片[いっぺん]の冰心[ひょうしん]
玉壺[ぎょくこ]に在[あ]

    江亭
  江亭  杜甫
胆腹江亭暖 胆腹[たんぷく]
 江亭[こうてい]の暖[あたた]かなるを
長吟野望時 長吟[ちょうぎん]
 野望[やぼう]の時[とき]
水流心不競 [みず][なが]れて
 心[こころ]は競[きそ]わず
雲在意倶遅 [くも][あ]りて
 意[い]は倶[とも]に遅[おそ]
寂寂春将晩 寂寂[せきせき]として
 春[はる][まさ]に晩[く]れんとし
欣欣物自私 欣欣[きんきん]として
 物[もの][みずか]ら私[わたくし]
故林帰未得 故林[こりん]
 帰[かえ]ること未[いま]だ得[え]
排悶強裁詩 [もん]を排[はい]して
 強[し]いて詩[し]を裁[さい]

   香炉峰下 新卜山居 草堂初成 偶題東壁

     香炉峰下[こうろほうか]
     新[あら]たに山居[さんきょ]を卜[ぼく]し、
     草堂[そうどう][はじ]めて成[な]り、
     偶[たま]たま東壁[とうへき]に題[だい]
  白居易
日高睡足猶慵起 [ひ][たか]く睡[ねむ]り足[た]りて
[な]お起[お]くるに慵[ものう]
小閣重衾不怕寒 小閣[しょうかく]に衾[ふすま]を重[かさ]ねて
[かん]を怕[おそ]れず
遺愛寺鐘欹枕聴 遺愛寺[いあいじ]の鐘[かね]
[まくら]を欹[そばだ]てて聴[き]
香炉峰雪撥簾看 香炉峰[こうろほう]の雪[ゆき]
[すだれ]を撥[かか]げて看[み]
匡廬便是逃名地 匡廬[きょうろ]は便[すなわ]ち是[これ]
[な]を逃[のが]るるの地[ち]
司馬仍為送老官 司馬[しば]は仍[な]
[お]いを送[おく]るの官[かん]たり
心泰身寧是帰処 [こころ][やす]く身[み][やす]きは
[こ]れ帰[き]する処[ところ]
故郷何独在長安 故郷[こきょう]は何[なん]ぞ独[ひと]
長安[ちょうあん]にのみ在[あ]らんや

   楓橋夜泊
  楓橋夜泊[ふうきょうやはく]    張継
月落烏啼霜満天 [つき][お]ち烏[からす][な]いて
霜天[そうてん]に満[み]
江楓漁火対愁眠 江楓[こうふう]漁火[ぎょか]
愁眠[しゅうみん]に対[たい]
姑蘇城外寒山寺 姑蘇城外[こそじょうがい]の寒山寺[かんさんじ]
夜半鐘声到客船 夜半[やはん]の鐘声[しょうせい]
客船[かくせん]に到[いた]

    哭晁卿衡
  晁卿衡[ちょうけいこう]を哭[こく]  李白
日本晁卿辞帝都 日本[にほん]の晁卿[ちょうけい]
帝都[ていと]を辞[じ]
征帆一片遶蓬壺 征帆[せいはん]一片[いっぺん]
蓬壺[ほうこ]を遶[めぐ]
明月不帰沈碧海 明月[めいげつ][かえ]らず
碧海[へきかい]に沈[しず]
白雲愁色満蒼梧 白雲[はくうん]愁色[しゅうしょく]
蒼梧[そうご]に満[み]

     春望
  春望[しゅんぼう]  杜甫
国破山河在 [くに][やぶ]れて
 山河[さんが]あり
城春草木深 [しろ][はる]にして
 草木[そうもく][ふか]
感時花濺涙 [とき]に感[かん]じては
[はな]にも涙[なみだ]を濺[そそ]
恨別鳥驚心 [わか]れを恨[うら]んでは
[とり]にも心[こころ]を驚[おどろ]かす
烽火連三月 烽火[ほうか]
 三月[さんげつ]に連[つら]なり
家書抵万金 家書[かしょ]
 万金[まんきん]に抵[あ]たる
白頭掻更短 白頭[はくとう]
 掻[か]けば更[さら]に短[みじか]
渾欲不勝簪 [す]べて簪[しん]
 勝[た]えざらんと欲[ほっ]

   桂林莊雜詠 示諸生

     桂林荘[けいりんそう]雑詠[ざつえい]
     諸生[しょせい]に示[しめ]
  廣瀬淡窓
休道他郷多苦辛 [い]うを休[や]めよ
他郷[たきょう]苦辛[くしん][おお]しと
同袍有友自相親 同袍[どうほう][とも][あ]
[おの]ずから相[あい][した]しむ
柴扉曉出霜如雪 柴扉[さいひ][あかつき]に出[い]ずれば
霜雪[しもゆき]の如[ごと]
君汲川流我拾薪 [きみ]は川流[せんりゅう]を汲[く]
[われ]は薪[たきぎ]を拾[ひろ]わん

     春暮
  春暮[しゅんぼ]  良寛
大江茫茫春将暮 大江[たいこう]茫々[ぼうぼう]
[はる][まさ]に暮[く]れんとす
楊花飄飄点衲衣 楊花[ようか]飄々[ひょうひょう]
衲衣[のうえ]に点[てん]
一声漁歌杳靄裏 一声[いっせい]の漁歌[ぎょか]
杳靄[ようあい]の裏[うち]
無限愁腸為誰移 無限[むげん]の愁腸[しゅうちょう]
[た]が為[ため]にか移[うつ]