(2009年04月01日)

「14歳の成人式」とは?

─ 先生方に『日本語』という仕事がふえて大変だ、という感じはないですか。

若井田 最初のうちは新しいことですから、負担感はあったでしょうが、漢詩にしろ古典にしろ、文法だとか専門的な深いことを追求するよりは、音や響きを楽しむという子供たちの感性にあわせているので、先生方も最初にもっていた、どうすればいいのか、どうなるのか、という不安は、やっているうちに払拭されてきたようです。

それからPTAの方々も関心を寄せて、たとえば『とどろき』(等々力小学校PTA広報委員会)という会報の中に、『日本語』について校長インタビューをのせたりしています。(注1)私も何回かPTAの集まりに招かれています。

─ 大人の方も日本語について、自分の問題として受け取っている、と見ていいようですね。それにしても、教える先生も大変です。

若井田 中学校の方は小学校と違って、先生は数学は数学の免許をもった先生が教えるというふうに、それぞれ専門に分かれていますから、では『哲学』『表現』『日本文化』を誰が教えるか、ということで多少戸惑いがあったと思います。

そこで中学校については社会科の先生が『哲学』をどの学級にも教えるなら、本来の授業の方には区の方から講師を別に派遣するとか、その逆もありで、先生のふだんの時間とバランスをとりながら進めたりもしました。

そうこうしているうちに、中学校でも成果がでてきました。世田谷区では今、「14歳の成人式」をやっているんです。31校ある中学の2年生の生徒会で活躍している生徒たちが2、3人ずつ集まって、生徒会サミットを作り、7月から12月にかけてプランを出し合い、1月にこれから14歳になる1年生に対して、2年生になったら、こういう生活をしたらいいよ、という提言をするんです。

今年で3回目です。ちょうど世田谷区は8校ずつ4つのブロックに分かれていますが、その一つのブロックで「ビー・アサーティブ」=自分たちが教科日本語の『表現』の中で、アサーション(assertion)=率直な自己表現、を学んで、それも相手を傷つけないように自己表現することを学んだが、これが私たちが後輩に伝えたい一番の贈り物だ、というプレゼンテーションをしたんです。これを見ると、中学における教科日本語も少しずつ定着してきたな、と思っています。

─ いま流行の小・中・高の一貫教育の雰囲気になっていますね。

若井田 たとえば『表現』の授業で、自分の学校のコマーシャルを作ろう、という課題があって、そのためには、学校のよさを発見しなければできません。学校再発見の試みはとてもよかった、と子供たちは感想を書いていました。

本当に子供たちが自主的に動けるような授業をしていると、こういうことも可能になります。子ども達も喜んでやっているようです。教育委員会の課題としては、いい授業を蓄積して、それをどう区全体に紹介していくか、映像教材も作った方がいいかなど、いろいろ検討しています。また、教科日本語担当教員も各学校から集まってもらい、いい授業の参観に行ったりという研修もしています。

新しい『日本文化』という教科書を使うときは、はじめてのことなのでまず公開授業をやって、先生方に見ていただく、というやり方もとっています。指導案も配って、それをさらに工夫してもらうようにお願いしています。

─ 6冊目の『日本文化』は、どのような特色をもった教科になっているのですか。

若井田 中学校では古典の音読は減って、考えること、表現することが第一になるので、『日本文化』についても、ふつうの日本史の中に出てくる日本文化史ふうにするのはやめよう、と考えて、衣・食・住を中心として、中学生の身のまわりにある日本文化について目を向け、それをふり返って、そこでよさを発見しながら、将来の生き方を考えるような構成でつくりました。

たとえば、最初の「食べる」ところでは豊かな水と食文化、とくに米、豆腐などについて述べたあと、食卓に季節を呼び込もう、と「旬」をまず考えて、しかし、旬だけではいけないので、食物は保存する必要もある、その技術工夫も日本は非常に進んでいる、とくに発酵食品文化も日本にはすぐれたものがある、その次には食事を豊かにするために、食のしつらえ、器、かざりつけも大切にしよう、最後はおハシがどんなに大事なすばらしい役割があるか、それをもつときのしてはいけないマナーなども取り上げました。

そして未来に伝えていきたい日本の食、それを自分なりに課題をみつけて調べてまとめよう、というのが唯一の課題です。こういう基本的スタンスで着る物、住いについても書いています。

たとえば、自然をとり込む縁側の話なども書いてあります。「楽しむ」ところでは歌舞伎を扱っていて、21年度から3年生をみんな国立劇場につれて行って、歌舞伎を見せることにしました。