(2004年03月20日)

講演会『「さまよえる中級人」へのメッセージ〈作詩質的〉』

服部 承風

適切な語間距離を

 多くの人が言葉を集めて、○○●●に合わせることに性急すぎるように見える。それよりも言葉と言葉との間には、ちょうど車に車間距離があるように、二字と二字の間、四字語と三字語の間に、適切な語間距離があるのです。これは文章、漢文を書くときはありません。漢詩にはある。

 この車間距離というものがわかると、これは近づき過ぎ、これは離れ過ぎ、と分かる。言葉も同じ、あてずっぽうに置けば良い、というわけにはいきません。この語と語の間隔がわかる。語間と私は言います。それが大切です。そういうことが、どこにも書いてない。

 二・二・三というこのリズムに乗せて、言葉が斡旋されるようにならなければならない。バラバラなのはアバラ立ち、といい、上手く作れば疎句というのができます。高邱[せいきゅう]が作った有名な疎句がある。そういうのを思い出して下さい。二・二・三のリズムの上に寄せた言葉が、チャランポランに見えながら、一句が一つの映像、イメージを作り上げている。そこまで来たら大丈夫です。

 その練習のもとになる句を親句と言う。横文字のシンクは考えるということですけれど、ここは考えなくてよい。大体の目安をつける。

 先人の句があまりすごいと、ちょっと格が違いますから、自分でいくつか詩集を読んでみて、この一句は分かりやすいな、というのを引っ張っり出してみる。だんだんそれがふえていく。

 こうすると、句の二・二・三の語間がどれくらいあいているか、分かるようになります。これが一つの成果です。

 もう一つは、下の三字語の中には二字語があるんだ、ということです。これが分からないと、その上に乗せる一字との補足関係が分からない。何を何々する。何々を何する。という補足が分からない。中級クラスの方々にこういうのがメチャメチャに多い。

 下の三字語の中の二字語をよく見る。上に乗せる二字語は下の修飾語なのです。二字語が下なら、上の一字に返るのです。

 私は最近、弟子たちにつねに勉強してくれ、と言って、一句練習の型別の教文をワープロで打ち出して渡しています。はじめは、何だこんなもの、という反応ですが、勉強してみると、こんなに良い句ができるようになるとは、思いませんでした、と言ってきます。

 二・二・三のリズム、その間の語間距離、それがだんだん先人の句に似てくる。正しい語と語の間、その間を眺めていく。狂ってくるはずがないんです。四字語について、二字語と二字語の間の距離がよくなるだけではない、下の三字語の取り方もぐーっとよくなる。入門書についている詩語集、あの中にあるものだけでなく、いろんな三字語ができるのです。

 今の世の中、手作り時代だといわれるが、漢詩の世界は手作りは絶対ダメです。日本語でいう熟語、二字語では、下の三字語と補足関係になる二字語二字語がうまくいかない。一句練習をやると、二字語に対する見方も変わってくる。こういう一句を仕組む練習を徹底してやれば、あとは起承転結の結句を意識した練習をやる。

 転句も同じように七字語です。二・二・三は変わりません。けれども調子が若干異なる。違うというのは、次の二字語とのかかり具合が変わる。だから、それまでの一句練習と必ずしも同じではなくて、カーブの投球をするようなものです。そこは直球ではダメなのです。直球では描けない。カーブの技術がいる。というようなことが、一句練習をやっているうちに、分かってきます。

 今、標準となる近体詩はみな平韻、その中で仄を使うところですから、平仄仄となる。下の三字語を取るには今までとは変わったことに目標を立てる、作詩質的の質的を立てて、そこへ当てるような勉強をする。十字が一つの景になっているか、表現が一つの情意の句になっているか、そういう風に、相互の間隔をタテ一列に並べてみる。

 そこから前後の置き換えをやっていけば、構造的な仕組みを、闇の中で手探りでやることが少なくなった、という段階に来ます。この辺のところが、初級を終了してもう中級という方々に、もっともお勧めしたいところです。