(2010年05月15日)

ラジオ深夜便の奇縁

私は中学二年の時に、白いあごひげの老先生に漢詩を教わりに行きました。老先生はもう戦後でお暇でした。良く来たと云って、ていねいに教えて下さいました。その当時、私はこう云うことは、ごく普通の事だと思っていました。あごひげの先生のような方もまだ沢山居られた。

私の教えていただいた先生は、実は大家で、その先生のお蔭でこの道がすっかり好きになって、そのままずっと今日迄つながっているのです。

昭和二十二、三年の頃ですから、諸橋先生の逢春吟の頃です。今気がついて見ると、あの頃、老先生のような人に漢詩を教わりに行った人は、実は誰も居なかった。だから私は良い事をしたと思っています。

一昨年、この話をNHKで披露した。ラジオ深夜便で午前四時頃の放送を二日続けてしたのですが、聞いていた人から投書が来ました。「そのひげのおじいさんは、もしや私の祖父ではないでしょうか」びっくりしました。その通りで、そのお孫さんから見ると、伯母さんに当たる人が先生のお嬢さんで、八十六才になっておられたが、お会いしました。

お嬢さんは私が先生のお宅に通っていた頃はもう嫁がれていて、おられませんでしたので、面識はなかったのですが、お孫さんが良く判った。あごひげの老先生に習いに行ったと申し上げただけで、お名前を申し上げたわけではないのに、私の祖父だとぴーんと来たと云うのが不思議です。しかも深夜便も毎日聞いているわけでなく、たまに、と云うのに、こう云う縁に、私もびっくりした。ひげ先生のお導きですネ。

私もまだまだ若いので諸橋先生や鎌田先生のように、ずっと続けたい、と思っています。今日はこれで終わらせていただきます。