(2009年11月15日)

埋もれた明治の漢詩人紹介

濱 久雄著『岸上質軒の漢詩と人生』
常務理事  窪寺貫道

 岸上質軒[しっけん](1860〜1907)は、ほぼ明治時代を生きた漢詩人である。万延元年、江戸浅草七軒町の宇都宮藩邸に生まれたが、維新に際し宇都宮に移住。幼少より学問を好み、一時期フランス語を学んでいる。司法省法学校在学中に健康を害し退学、以後は大蔵省に四年間勤務する傍ら長らく博文館で編集他に従事。

 一方で漢詩界で活躍中に再び病を得て一時は回復したが、明治四十年不帰の客となった。享年四十八。

 この本に掲載されている詩の数は、明治14年から20年までの203首と、同34四年から39年の118首であるが、これらの中の100首に就いては著者が注釈をされている。

 全般的に見ると、旅や宴遊の詩、吟友との応酬の詩、感懐の詩の他、晩年の詩の中には当然のこと乍ら、日露戦争に関する詩も多い。

 詩の形は絶句、律詩、古詩と各体にわたっているが、明治漢詩壇で埋もれている詩人の中の一人を紹介する好著である。では、紙面の制限の許す限り七言絶句のみ紹介する。

石橋山次乃木大佐韻(明治十六年)
駐?西望古函關  落日沈沈喚不還
獨對幽墳有餘感  英雄埋骨石橋山

 結句の自注に「山上に佐奈田与一の墓あり」とある由、乃木大佐は後の乃木希典大将である。他にも乃木さんへの次韻あり。

客舍舎偶成(明治十八年)
一客都門過八年  春花秋月枉陶然
周游若遂平生志  海外山好墓田

偶得(明治三十六年)
雨後細風吹不寒  釣魚磯上日三竿
浪華凝紫潮華白  大海無邊春色闌

 紹介出来なかったが、律詩や長い古詩にも魅力的な詩が多い。

 終りに、この本の発行所他は次の通り。

   発行所 (株)明徳出版社