(2009年01月01日)

二松学舎大学
漢詩研究会からのメッセージ

詩人の楽器
 
二松学舎大学三年  早川 太基

 七絃琴という古代楽器。その音色は森羅万象を包括し、爪弾くときには天地を震わせる。

 伏義氏が創り、孔子を始めとする歴代の聖賢が座右に置き、時にはみずから作曲した。屈原も、司馬相如も、李白も、王維も、蘇東坡も曲を残している。──七絃琴とは詩人たちの楽器でもある。 

 詩人の末席に連なる僕が、この楽器を奏でるのも当然だろう。「独坐幽篁裏。弾琴復長嘯」(王維、竹里館)「払彼白石。弾吾素琴」(李白、幽澗泉)を読むうちに、いつしか魅了された。

 習い始めたのは中学二年である。楽器は購入できたのだが、先生が見つからずに困っていた。そこに──天佑神助であろうか──先生が中国から来日したのである。

 先生の名は曽成偉。成キの人。演奏および琴の製造にかけては著名な人物である。宿舎に押しかけ、「教えて下さい」と頼みこんだ。先生も、予期せぬ懇願には驚いたと思うが、快く教えてくれた。

 五日間で二曲覚えた。一晩は我が家に泊まっていただき、指法をとことん叩き込んでもらった。

 その後、今に至るまで。琴を奏でるのは日常生活の一部である。そこからは多くの出会い、物語が生まれ、生活を多彩にしてくれる。とっておきの逸話として──

 先年、石川岳堂先生と四川にご一緒した時、武侯祠において一曲披露した。終わってすぐ、「こんなのが出来たよ」と下さったのが左の一首である。

  旧祠深処入幽篁。 忽聴瑤琴響古堂。

  堂裏冷冷孰弾者。 如今此有少?康。

 「?康」は竹林七賢の一人。弾琴と詩文と、みな抜群の腕前であった。「少?康」とは気恥ずかしいが、及ばずながら「平成の?康」たるべく琢磨したい。古人曰く「彼人也。予人也」である。



七絃琴を弾く早川太基さん