(2010年02月15日)

漢字変換奇譚

東京純心女子高等学校2年  金澤芽依

 秋光爽やかなる朝、二松學舎大学の授賞式会場までエレベーターで上がると、窓前、現れたのは大きな富士山だった。まるで授賞式を祝福してくれているかのような美しい富士山が、「新雪」「頂上」「雄大」といった、漢字で出来たアートのように見えた。驚いて目を屡叩かせると、「漢字富士」は元の姿に戻った。

 初めて漢詩を作ったこの夏は、私の目に映る全てのものが漢字になった。食事は「飯・菜・汁」、テーブルは「卓子」、手紙が「書簡」になり、インターホンが鳴れば「来客」と、勝手に漢字変換されてしまうほどだった。

 寝ても醒めても、頭の何処かで漢詩のことを考えていたので、きっと難しい顔をしていたと思う。家族との夕食を大切にしている父には、少し可哀想だったかもしれない。だから、私の無口と父の寂しさを踏台にして出来上がったこの漢詩で、優秀賞を頂くことが出来て本当に嬉しかった。

 漢字は面白い。私は、この夏の不思議な「漢字変換現象」をとても気に入っている。初めは難しくても、こうして歩み寄れば漢字はきっと心を開いて、成り立ちや歴史などの昔話もしてくれるだろう。

これからも、もっと漢字と仲良くなって、漢字に隠された物語を、ひとつひとつ見つけていきたいと思う。


車椅子の金澤芽依さんを前に、
左から両親、河野初世先生