(2010年08月15日)

「次韻」の楽しを満喫する1

石川岳堂・窪寺貫道両先生の至芸

 一人が作った詩と同じ韻字を使って、新しい詩を作ることを「次韻」する、という。何とも優雅な作詩法だ。一人のひとの詩心に寄り添うように、もう一つの詩心が開花する。二人の間には友情と呼んでもいいようなものが生じているのではないか。次韻したい、と願う気持の中には、まず相手に対する敬愛の情がなければならないだろう。

 幸いなことに、石川岳堂、窪寺貫道両先生によって、私たちは「次韻」の模範作品を、しばしば味わうことができる。

 五月八日、二松学舎大学で開かれた全漢詩連全国理事会・評議員会の懇親会で、まず石川先生がお祝いの七絶をサラサラ。

雲白風薫五月天
十三樓上集群賢
甲論乙駁議成後
共酌芳醇作酒仙

それを見て、窪寺先生がこれまたサラサラ。

花散緑新初夏天
松黌參集鷺?賢
興充南北東西話
佳酒重杯欲作仙

次石川岳堂先生理事評議員会即時瑶韻

 鮮やかな技にただただ感嘆する。二つの詩が共鳴して、新しい小宇宙が浮かび上がってくるようだ。

 5月14日、神奈川県漢詩連盟の第五回総会で、本誌2〜5ページで紹介した石川先生の講演があった。テーマは来年の「扶桑風韻」第8号の課題「花」にちなんだ「花を詠う詩」であった。その中で、十二の花の詩が紹介された。そのあとの懇親会で、石川先生は例によって、テーブルの紙ナプキンに筆ペンで七絶一首をスラスラと。

偶成
節入夏初新緑加
相州詩会勢逾誇
庭前紅白真成色
紙上添来十二花

それをうけて、窪寺先生もナプキンに、

敬次岳堂先生原玉
今朝迎夏暑纔加
金港騒人盟更誇
丘上薔薇妍麗盛
話中十二和斯花

 そして、住田笛雄さんが両先生の七絶を自慢の声で朗々と吟ずるのも、いつも通りであった。窪寺先生はサラリおっしゃる。

 「次韻するのはむずかしくないですよ。すでに石川先生の詩で大きな骨組みができているので、それにつかずはなれず、ついていけばいいんですから」

 早くそんな境地に到達したいものだ。