(2006年04月01日)

お薦めの一首

妻を詠う
常務理事  大地 武雄

 大建の詩に「新嫁娘」がある。

三日入厨下 三日厨下に入り
洗手作羹湯 手を洗って羹湯を作る
未諳姑食性 未だ姑の食性を諳んぜず
先遣小姑嘗 先ず小姑をして嘗めしむ

 詩意は、夫の家に嫁いで三日月、手を洗い清めてあつものをつくる。まだお姑の好みを知らないので、小姑に味みをしてもらう。

 嫁いできた新妻の初々しさ、不安げに、かいがいしく働く姿を見事にとらえている。

 新妻の勤めは食事、その中でもあつものづくり、味にはその家の味がある。姑に認められることが家族の仲間入りの第一歩、失敗しないための知恵は小姑に味みをしてもらうのが一番、いつの世にもどこの国にも通ずるものがある。

 権徳輿[けんとくよ]の詩に「玉台体」がある。

昨夜裙帯解 昨夜裙帯解け
今朝蟢子飛 今朝蟢子飛ぶ
鉛華不可棄 鉛華棄つべからず
莫是藁砧歸 是れ藁砧[こうちん]の帰る莫からんや

 詩意は、昨晩もすその帯がひとりでに解け、今朝は足高ぐもが飛び出して嬉しいことの前ぶれ、おしろいつけての化粧は念入りにする。これで夫が帰って来ないことなどどうしてあろうか。

 裙帯[くんたい]が解けるは夫が帰る前兆、蟢子[きし]が現れるはめでたい知らせ、藁砧は砧が砆で夫と同者であるところから夫の隠語等の伝承を巧みに使って、夫の帰りを待つ妻の心情をユーモラスに詠じた名作である。