(2006年01月01日)

李白「将進酒」の二句

全日本漢詩連盟 運営委員  田邉 閑雄

 若年のわたくしが僭越ですが、好きな漢詩について述べさせていただきます。「一番好きな漢詩」はその時々かわりますけれども、現在は李白の「将進酒」です。特に気に入っている句はと申しますと、

天生我材必有用 天 我が材を生む 必ず用あり
千金散尽還復来 千金 散じ尽くせば
還た復た来たらん

 「天 我が材を生む」とは、自負もここまで強ければ、却って心地よいではありませんか! 自信のある人にとっては、共感できるプライドです。

 「天馬空を行くが如き」詩の天才李白が出現するには、意気揚々と蜀を出て行く青年期までに、相当の修練を積んだに違いありません。才能と、根気と、努力ができる環境、この三拍子が揃わないと、天才というのは生まれないのだと思います。

 李白は、天賦の才能に恵まれていたのは事実です。悲痛な詩を詠んでも、豪放磊落であり続け、おおらかさを失いません。そしてさらに、若い頃の努力に裏打ちされた自信があるのだと思います。

 その甲斐がなく、なかなか登用してもらえない。だからこそ「憂いを消す為の酒」も必要であり、「天 我が材を生む」の句も生れたのでしょう。