(2008年04月01日)

北原白秋の詩を思い出す

雍陶[ようとう]「城西訪友人別墅[べっしょ]

蕗紅  石川 晏子

澧水橋西小路斜 [れい]水の橋西 小路斜めなり
日高猶未到君家 日高くして猶お未[いま]だ君が家に到らず
村園門巷多相似 村園門巷 多く相い似たり
處處春風枳殻花 処処の春風 枳殻[きこく]の花

(枳殻[きこく]からたち)

 澧「れい」水橋の西の郊外、細い道が続いている。日も大分高くなったのに、まだ君の家に着けない。村里の家々は同じような作りで、何処を行ったらよいのやら。あちらこちら春風が吹いて枳殻[からたち]の白い花が咲きにおう。

 始めて来た処でも、何となく前に来たような慕わしげな思いにかられることがある。この雍陶の詩は白秋の「からたちの花」「この道」と相俟って、心の底の記憶をよびさますような懐かしい味わいを持つ。「処処の春風 枳殻の花」思わず口をついてくる一句、さりげないが品のあるこのような詩を作りたいと、常々思っているのである。