(2008年04月01日)

“大人の友情”に憧れる

杜甫「贈衛八處士」

桜庭 慎吾

 高校3年の夏、桑原武夫の名解説により此詩に出会った。

 「一挙に十觴をかさね 十觴も亦酔わず 子が故意の長きに感ず」杜甫が描く大人の友情。自分も大人になったら、この様な生涯の友人ができるだろうか?などと秘かに憧れに似た感情を覚えている。

 その後何十年か経ち、杜甫、47歳の棄官の謎解きに興味を持ち、杜甫の詩を経年的に読んでみた。社会詩と云われる「三吏・三別」で杜詩の一時期を画す同じ時期に此詩は作られたと考える。

 然し「三吏・三別」に比し厳しい切迫した表現はなく、情緒が漂う。「夜雨 春韭[しゅんきゅう]をきり 新炊 黄粱を間[まじ]う」の句には新鮮な色彩感と共に友情が伝わってくる。

 結句の「明日山岳を隔てなば 世事兩[ふた]つながら茫茫」に当時の杜甫の複雑な心境を思い共感できる。そして胃頭の句「人生相見ず ややもすれば参[しん]と商の如し」に促されて、元気なうちにできるだけ友人に会っておこうと考えている昨今である。