(2008年04月01日)

すさまじい反戦歌

杜甫「石壕吏」

青山  広谷 高士

暮投石壕村   有吏夜捉人
老翁踰牆走   老婦出門看
吏呼一何怒   婦啼一何苦
聽婦前致詞   三男?城戍
一男附書至   二男新戰死
存者且偸生   死者長已矣
室中更無人   惟有乳下孫
孫有母未去   出入無完裙
老嫗力雖衰   請從吏夜帰
急応河陽役   犹得備晨炊
夜久語声絶   如聞泣幽咽
天明登前途   独与老翁別

 何と言う悲しい詩であろう、そして何と言うすさまじい反戦歌であろう。役人の怒号と老婦の鳴咽が千年の時を越えて聞える様である。

 これは昭和22年松山高校(旧制)1年の時中島千秋先生から習ったものであり、戦後間もない青春の胸にぐさりと突き刺さった詩である。同時に松山の生んだ大詩人正岡子規の短歌も教わった。訳[やく]は子規の歌にお任せするとして、それ以来今日まで、これ以上の反戦歌にはお目にかかった事は無いと思っている。

 明治31年「竹の里歌」(正岡子規)より

  牆[かき]越えてをぢは走りぬうば一人
   司[つかさ]の前にかしこまり泣く

  三郎は城に召されぬいくさより
   太郎文こす二郎死にきと

  生ける者命を惜しみ死にすれば
   又かえり来ず孫一人あり

  おうなわれ手力[たじから]無くと裾かかげ
   軍[いくさ]に行かん米炊[かし]ぐべし

  うったなる宿のおうなの声絶えて
   咽びなく声聞くかとぞ思ふ