(2008年04月01日)

東洋と西洋が同居して

杜牧「山行」
藤井 明
   山行    杜牧
遠上寒山石径斜
白雲生処有人家
停車坐愛楓林晩
霜葉紅於二月花

 私は、漢詩を絵画ととらえ、漢字を顔料と考えている。そこで色彩感に溢れる詩に興味をそそられる。同人の「江南春」にも心を惹かれるゆえんである。

 起・承二句には、無彩色に近い東洋的隠者の世界が描かれており、後半では一転して爛紅、猩紅の原色のタッチが施されて、紅葉の美しさが西洋的な鮮明な雰囲気をかもし出している。

 しかも夕暮れ時のそれであるだけに、あたかも人生晩年の豊かな輝きのごときものを連想させて、老境にある私には若き日にもまして感慨をあらたにして鑑賞できる詩境を提供してくれる。

 一詩の中に、東洋と西洋が同居して、水墨画の展示場から、洋画の展覧会場に歩を移した時のようにも感じられる。わずか28字の世界に様々なことを想像させて興味のつきない名詩である。