(2008年04月01日)

脳天をどやされた

白居易「對酒」
雪稜  松村 曉二

    對酒  白居易

蝸牛角上爭何事 蝸牛角上 何事を争う
石火光中寄此身 石火光中此の身を寄す
隨富隨貧且歡樂 富に隨い貧に隨いしばらく歓楽せよ
不開口笑是癡人 口を開いて笑わざるは是痴人なり

漢詩の愛好家なら何方もご存じの白居易の句であります。

何故この句を選んだかと申しますと、私は三人兄弟の末っ子で、ご多分に漏れず殊の外目立ちたがり屋であったろうと思います。

29歳の折り漢詩人と出合いました。その方の影響も多少有りましたが漢籍を好んで読みました。史記・四書・碧巌録・その他さまざまです。

しかし実際は何ら理解することは有りませんでした。しかも例の目立ちたがり屋ですから詩作をすれば故事を入れねばと獺祭すること四苦八苦して何とか絶と為し律と為して得々としては先輩の作に次韻などして贈ったり、今から思えば鼻持ちのならぬ奴で有りました。

そんな矢先40歳に為るや為らずの頃、この白居易の「對酒」に脳天をどやされたのです。

多少自分の行動に忸怩たるものを感じ始めた頃の出会いでありました。

この句は先ず平易であること、チクリと箴言を与えていること、故事を知る人には勿論、知らない人にも意味の解る平易さ、転結の何とも言えない人生観。この句の出会いから、平易を旨として社中同人と伴にいつまでも青春をと思い今日に至りました。