(2004年04月01日)

良い風が吹いて来た

全日本漢詩連盟会長  石川 忠久

 3月8日の日経新聞に、コマツの前社長が、自分の社長としての経験に照らして、実業にも「漢文」「日本語」の素養が物を言う、と論じていた。商売には英語も大事だが、何よりも己[おのれ]の言葉と、それの基礎を成す古典(漢文)が肝要という、当然の事だが、自分の経験より出たことだけに、重味を以て人に読まれたと思う。

 このように、畑違いの人、ことに実業家が説くと、説得力がある。われわれが言うと、我田引水に取られてしまうのだが。

 もう、今や売れっ子の存在になっている数学者の藤原正彦氏(お茶の水女子大教授)など、数学の基礎は漢文であることを力説しておられる。分野が全く反対のような事だから迫力がある。父が新田次郎、母が藤原ていと高名な作家であるのも、与って力があるだろう。

 正論がなかなか通らないのが世の中だが、こうした識者の発言が周囲から起これば、次第に“良い方”へと風が吹いてくる。今年の正月、文化審議会の答申として、国語教育をより充実すること、というのが文部科学大臣に出されたのは、その現れの一つであろう。

 先日、文科省の関係者と会った折、次の教科の改定では国語重視の方向へ進むような話が出た。これも良い消息[ニュース]である。

 私ごとで恐縮だが、2月下旬に行われた東京都立高校の入学試験の国語の問題に、私の旧著『漢詩の心』より文章が採られた。試験の当日、事後承諾を求めて来たので、もとより喜んで承諾した次第。高校の入試であるから、中学生に影響を与えることになる。誰が見つけたのか知らないが、よくぞ漢詩の問題を考えついてくれたものだ。

 私ごとついでにつけ加えると、NHKのラジオ第二放送で放送している「漢詩への誘い」は、この4月から20年目に入る。テキストは12万部も売れているという(但し、著者の私には原稿料だけ、念のため。呵々)。あらためて多くの方々の支持を得ていることを、つくづくと感じている。

 当全日本漢詩連盟も、この勢いに乗じて、何とか今年の数値目標、会員3000人、を達成したいものである。