(2006年04月01日)

清泉女学院訪問記

全日本漢詩連盟会長  石川 忠久

 平成18年2月2日(木)、文科省の“達人”事業によって、鎌倉市北部の清泉女学院を訪問した。

 午後2時ごろ、大船駅で下車すると、ちょうど岡崎満義さんと一緒になった。岡崎さんは今日の授業を参観するとのこと。タクシー同乗、岡の上なる女学院に向かう。環境絶佳、風格ある建物が?置された校園も立派。

 玄関に瀧康秀教諭が出迎える。瀧教諭は実は上智大大学院での私の教え子である。ここへ勤務して17年になるという。2時50分より50分、高校1年生約180名に授業をする。

 授業は、時間が短いので詩二首、杜甫の「絶句(江碧にして)と、李白の「早発白帝城」を取り上げる。唐の時代背景や、地図によって李杜の足跡の説明をしたあと、詩に入る。今日の目玉は、白帝城の猿の鳴き声だ。

 「猿の声」は、昔、神田の古本屋で見つけたもので、駐日オランダ大使ファン・ヒューリック氏の「ギボン・イン・チャイナ」という著書の付録である(ソノシート)。日本猿とは全く異なる文字通りの“絶叫”で、この悲しい鳴き声が李白の詩の鑑賞に大きな意味を持つ、というのがさわりの部分だ。

 あとから送って来た生徒の感想文にも、「猿の声」に言及したものが多かった。また、中国語で漢詩を朗読したのも、反響が大きかった。優秀な生徒の学ぶ学校だけあって、感想は極めて真摯な態度が表れている。

 中で、裏表びっしり書いたものがあり、古典文学を学ぶ面白味と、自分の好きなことに打ちこむ喜びを得た、という感想を述べていたのには感心した。お世辞半分にしても、こういう反応を得るのは嬉しい“冥利に尽きる”というところだ。

 終了後、校長神保勝明氏としばし歓談。氏は山形鶴岡の出身、専門は数学だが、漢文の造詣も深いように見受けた。夕刻、瀧君に送られて大船駅へ。ここで岡崎さんと別れて帰途についた。

       偶成

併聴音声詩味深 音声を併せ聴いて詩味深し
青漣佳作出郷吟 青蓮の佳作出郷の吟
三巴峽裏野猿叫 三巴峽裏野猿の叫び
応入東瀛少女心 [まさ]に入るべし東瀛[とうえい]少女の心

 (青蓮は李白の号。東瀛は日本のこと)