(2007年08月15日)

日本語特区の作った教材

全漢詩連会長  石川 忠久

 この度、東京の世田谷区では、「日本語特区」に認定されたのを受け、小・中学校用の「日本語」の教科用図書(準教科書)を作成し、4月からは授業を開始した。私も当初より相談に預っていただけに、喜びに堪えない次第である。



世田谷区「日本語特区」の日本語読本

 さてその実際は、小学校「日本語」が1・2年用、3・4年用、5・6年用の3種、中学校用として「表現」「哲学」がある。まず採録された「漢詩」を見ると、「日本語の響きやリズムを楽しもう」という表題のもと、1年では高啓「胡隠君を尋ぬ」、杜甫「絶句」の2首、2年では孟浩然「春暁」、王維「竹里館」、李白「静夜思」の3首(いずれも五言絶句)が採られている。

 杜甫の「絶句」は、「江碧[みどり]にして…」ではなく、「遅日江山麗[うるわ]しく」の方である。“望郷の思い”が強く出るものより、美しい景色が目に浮かぶ、いわゆるヴィジュアルな詩の方が取りつき易い理だ。

 3年になると四首に増え、杜牧(晩唐)「江南の春」、司馬光(宋)「客中初夏」、劉禹錫(中唐)「秋風の引[いん]、王維(盛唐)「鹿柴」と、作者の年代別、季節のバランスを考え、はじめて七言絶句「江南の春」「客中初夏」が出てくる。

 以下、採録された「漢詩」を学年別に紹介しよう。

○4年王維(盛唐)「元二の安西に使いするを送る」(以下すべて七絶)李白(盛唐)「早[つと]に白帝城を発す」「廬[ろ]山の瀑布[ばくふ]を望む」、杜牧(晩唐)「山行」、李白「黄鶴樓にて孟浩然の広陵に之[ゆ]くを送る」

○5年朱熹(宋)「偶成」(七絶)、耿?[こうい](中唐)「終日」(五絶)、王昌齢(盛唐)「芙蓉[ふよう]楼にて辛漸[しんぜん]を送る」(七絶)、杜甫「江亭」(五律)、白居易(中唐)「香炉峰下、新たに…」(七律)

○6年張継(中唐)「楓橋夜泊」(七絶)、李白「晁[ちょう]卿衡[こう]を哭す」(七絶)、杜甫「春望」(五律)、広瀬淡窓「桂林荘雑詠」(七絶)、良寛「春暮」(七絶)合計25首。

 五・七言の絶句と律詩をすべて出すようにし、6年では日本人の漢詩も出てくる。聞くところによると土屋秀宇委員は当初70首を用意したというが、まず最初の試みとしてはこれで良しとしなければなるまい。土屋委員はじめ皆さんの用意を多とし、画期的な快挙を喜びたいと思う。