(2007年01月01日)

中国漢詩現地報告@

銭明鏘先生に会う

全漢詩連駐中国代表  金 中

 2006年1月、私は東京外国語大学から文学博士号を授与され、計11年の日本留学がついに終了した。帰国するとともに全漢詩連から「駐中国代表」の肩書きを頂き、今後は漢詩の活動に専念し、日中漢詩界を結ぶ窓口としての役割を果たしたい。



西安交通大学の教壇に立つ金中さん

 中国の漢詩界とは以前から文通や電話でいろいろ付き合ってきているが、やはり現地で実際にあってこそリアルな印象が得られる。3月から中国を廻る長い旅に出た。北京には1ヶ月近く滞在し、旧跡や大学などいろいろと見学した。

 3月21日の午前、「中華詩詞学会」の本部を訪ねた。あるビルのまる一階分がその事務所に使われている。雍文華[よう ぶんか]副会長を始め、晨ッ[しん すう]、劉克能[りゅう こくのう]、李一信[り いっしん]、蒋永年[しょう えいねん]などの諸先生が迎えてくれ会談した。中華詩詞学会は中国における唯一の全国漢詩組織であり、日本における全漢詩連に相当する。

 会員はおよそ1万人でそのうちの最高齢者はなんと105歳で、辛亥革命時期の文学団体「南社」のメンバーである。

 今後両漢詩組織の交流を大いに進めていこう、という意が雍文華副会長より伝えられた。「中華詩詞学会」住所:中国北京市西城区太平橋大街4号、電話:010-66110906)

 同日の午後、中華詩詞学会所属の「中華詩詞社」を訪ねた。一軒の北京古典式の平屋建築「四合院」がそのまま事務所となっている。ある漢詩愛好者がこの住宅を寄付したそうである。中華詩詞社が発行している『中華詩詞』という月刊誌は現在2万部に達し、中国漢詩界の権威誌と言えよう。

 私が以前執筆した石川忠久先生と水出和明さんについての評論や全漢詩連の関連記事などはいずれもこの雑誌に発表され、日本現代の漢詩事情を中国に伝えて頂いている。「中華詩詞社」住所:中国北京市東城区北兵馬司17号、電話:010-64061498)

 4月6日、北京の玉淵?[ぎょくえんだん]公園で青年漢詩人の有力メンバーが数10名ほど集ってきた。主催者は首都師範大学の「中国詩歌研究センター」に勤める檀作文[だん さくぶん]博士である。当日は小雨の中の桜見をしてから会議室での勉強会に移り、私は「日本当代漢詩概況」を題に発表した。

 その後南方の揚州・南京を廻って杭州に辿り付き、4月16日銭明鏘[せん めいしょう]先生に会った。杭州漢詩界の大家として銭明鏘の高名はかねてから伺っている。逢ってみるとさすがに面白い方で、その大らかな性格と豪快ぶりは李白を彷彿させるほどである。

 当日は「西渓文化と紅楼夢シンポジウム」が開催され、全国から多数の『紅楼夢』専門家が討論に来た。「西渓[せいけい]は昔から杭州の有名な観光地で、歴代の詩人たちがここを詠んでおり、近年湿地公園として新たに整備されている。

 シンポジウムの会場は西渓の中にある。船に乗って渓流を進み、漁村や竹林があちこち目に映る。風景は絵の如く、また正に漢詩の世界そのものである。

 杭州と言えば「西湖[せいこ]のほうが高名であるため、いつも大勢の観光客で賑わっている。それに比べ、西渓はよほど悠閑とした気持ちで観覧できるよい名所である。

 銭明鏘さんは「西渓吟苑」と号するその自宅を西渓の近辺に据え、個人の漢詩誌も出している。

 4月22日に、湖南省の張家界で「世界漢詩協会」の第1回大会が開催された。世界漢詩協会は香港で登録され、2003年に発足した新たな漢詩組織であり。『世界漢詩』という雑誌を年に4回発行している。

 会長の周擁軍さんから日本漢詩界の代表者をぜひ招聘したいという依頼が来て、全漢詩連に連絡したところ、石川先生がその名誉会長をご担当なさることになった。
「世界漢詩協会」連絡先:中国北京西区100041-18号信箱 電話:010-86536314 http://www.6book.com.cn

 個人的なことになるが、9月から私は母校の西安交通大学の日本語科で教鞭を執り、「日本文学史」「翻訳論」の授業を担当することになった。日本漢詩のことを、日本文学の一部として取り上げた。2007年から一般学生向けの「漢詩創作」という科目を設ける予定である。

 なお、最近「金中現代漢詩ホームページ」http://www.jzshici.com)を立ち上げた。

 今後中国各地を廻り、さまざまな形で全漢詩連のことを中国に紹介し、中国の漢詩事情を皆様にご提供致したいと思う。



日本語科の学生に囲まれた金中さん