(2009年04月01日)

中国漢詩現地報告B

「青春詩会」の漢詩イベント

全漢詩連駐中国代表  金 中

 日中両国にとって、若者における漢詩の普及と育成は漢詩の将来にかかる極めて重要な課題である。中国では、『中華詩詞』雑誌社が主催する「青春詩会」[せいしゅんしかい]がその最たるイベントである。

 月刊『中華詩詞』は、中国唯一の全国レベルの漢詩組織・「中華詩詞学会」の機関誌である。現在の発行数は2万5千部にも達し、中国の漢詩界において絶大な影響力を持っている。

 ちなみに、中国における現代自由詩の権威誌・『詩刊』[しかん]のほうは、発行数は7千部である。中国民間における漢詩の愛好者はすでに二百万人ほどいるという。

 「青春詩会」は2002年から毎年11月に北京で開催されて、2008年は六回目に当る。資格は35歳以下の青年で、自作を十首選んで応募する。毎年全国で百名以上の応募者があり、それまで10名であった入選枠を、2008年からは12名に拡大した。

 入選者の北京までの往復交通費は各自負担で、北京にいる3泊4日の滞在費用は全部『中華詩詞』雑誌社が負担することになる。

 私はかねてから「青春詩会」に関心を持ち、今回始めて応募して、入選した。

 ほかには、江蘇省と湖南省からの高校国語教師が2名、北京の「人民大学」と天津の「南開大学」で中国古典文学を専攻する大学院生が2名、湖北省の「華中科学技術大学」からの大学生が2名、北京からの軍人が1名、遼寧省からの労働者が1名、河南省からの農民が1名、安徽省からの銀行員が1名、広東省からの公務員が1名、というメンバーである。

 そのうち男性が9名、女性が3名。最年長者が34歳、最年少者が22歳。皆普段から漢詩の研鑽に励んでいる。



「青春詩会」の入選者。右から4人目が金中さん

 

 私は11月22日に西安から夜行列車に乗り、11時間を経て翌朝北京に着いた。市内の西にある「中礎賓館」というホテルでチェックインを済ませた。毎年、「青年詩会」の会場と宿泊先がここになっている。

 24日の午前中に開会式が行われ、中国漢詩界の名だたるリーダーたちと一堂に会した。

 中華詩詞学会常務副会長・鄭伯農[ていはくのう]氏、中華詩詞学会育成センター主任・李樹喜[りじゅき]氏、中華詩詞学会秘書長・王徳虎[おうとくこ]氏などが相次いで発言し、「青春詩会」の主旨や青年への期待などを語った。

 午後から、入選者がそれぞれの漢詩歴や漢詩観を語り、私は全日本漢詩連盟のことを皆に紹介した。

 25日は、中華詩詞学会顧問・周篤文[しゅうとくぶん]氏と欧陽鶴[おうようかく]氏、『中華詩詞』雑誌編集長・楊金亭[ようきんてい]氏と張結[ちょうけつ]氏、『中華詩詞』雑誌常務副編集長・趙京戦[ちょうけいせん]氏と丁国成[ていこくせい]氏などの諸先生が、入選者たちとともに、作品を具体的に検討する日である。

 入選者全員が提出した代表作を順に追って、一首一首丁寧に論評を加えた。どの作品が佳作で、どの作品に問題点があるか、問題の箇所を別のどの言葉に置き換えたらよいかなど、皆遠慮なく活発に発言した。

 私の作品が真っ先に取り上げられ、その討論がなんと一時間も続いた。普段自作についての意見を聴くチャンスが少ないので、この討論を聴くのは実に愉快であったし、大いに勉強になった。

 諸先生はどちらかというと、擬古的な作品より、現実生活が反映され、現代的な息吹のある作品のほうを高く評価している。これは『中華詩詞』雑誌の一貫した姿勢である。

 音韻に関しては「平水韻」と、入声字を無くした現代中国語の発音による「新韻」の両方を認めている。

 26日は入選者の北京市内観光も予定されていたが、私は大学で授業があるため、25日の夕方、西安行きの夜行列車に乗って帰途を辿った。

 「青春詩会」に参加して、若者に対する漢詩の育成に、『中華詩詞』雑誌社及び中華詩詞学会が相当力を入れていることがよく分かった。中国では若者の漢詩実力者が多くおり、漢詩復興の気配も何となく感じられてきた。

 近年、中国ではいわば「国学」のブームが起こって、伝統文化に対する社会的関心が高まり、『論語』を始めとした古典を紹介するテレビ番組が高い視聴率を得ている。

 この気運は漢詩の復興にも繋がるだろう。西安交通大学では「国学社」という大規模の学生サークルが立ち上がり、私は月に一回、そこで講演することになった。

 これまで、「現代における漢詩と自由詩」「現代日本の漢詩事情」といったテーマについて語り、また、琴のコンサートで唐詩の朗誦をした。

 なお、大学は私にhttp://gr.xjtu.edu.cn:8080/web/jinzhongという新たなホームページを作ってくれた。

 2009年は大学生と一般市民向けに、漢詩の普及活動を模索してみるつもりである。



西安交通大学で漢詩を朗誦する金中さん