(2007年11月25日)

映像とともに李白を詩う

中国の名詩を詩う会

                        
  磯野 衛孝

当連盟の団体会員である「中国の名詩を詩う会」(神奈川県)は、鎌倉市民文化祭の一環として、「映像と共に李白を詩う」と題して漢詩朗詠の発表を、去る11月25日、鎌倉市生涯学習センターのホールで行いました。

舞台の背景に中国から入手した絵画が投影され、朗詠者はフルートと琴の前奏で歌い始め、これに伴奏が続くという構成で行われました。詩吟とは少し趣が異なり、判り易い現代語に訳した歌詞を、ゆったりとした伸びのある和風と洋風を巧みに織り交ぜた音調で、朗詠するものでした。演目は李白の詩十八首を選んで、ほぼ作成年代順に構成され、一首ごとに解説がついて、李白の一生を振り返るようになっていました。



李白の衣裳を着けて朗詠する磯野衛孝さん

「峨眉山月歌」「静夜詩」「秋浦歌」など、有名な詩のほか、詩吟でも滅多に詠われないような詩も含まれていました。曲風は詩によって異なり、詩の内容に相応しいように工夫して、一首ごとに作曲されたものです。朗詠者は男性、女性それぞれの持ち味を生かした声調で演じ、中には中国風の衣装で李白(若年時・老年時)の雰囲気を、「子夜の呉歌」では歌姫、また「清平調詞」では楊貴妃らしい雰囲気を出すように演出にも工夫がこらされました。「清平調詞」は当時の旋律が伝承されていないので、宮廷の雰囲気を醸し出すべく、この日のために苦心して作曲したものですが、新しい息吹が感じられました。

李白といえば月と酒を詠んだものが多いのですが、それ以外に「秋夕旅懐」「大原早秋」「清平調詞」は新鮮で、そして最後にこの会の主催者佐藤敏彦氏が詩った「臨路歌」は李白の今生の思いがこもる熱唱で、圧巻でした。

聴きに来られた方は、定員280名の会場にほぼ満員の入りで、詩が「詩仙」の作ということもあってでしょうか、静粛に聴き入っておられました。途中の休憩をはさんで約90分の公演でしたが、会場を後にしたあとも、余韻が耳に残っているようでした。

詩吟は江戸末、明治から今日まで素晴らしい漢詩の楽しみ方として発達して来ましたが、平成時代の今、さらに新しい方向に向かって新しい風が吹いているようにも感じられます。