(2006年07月01日)

時頼「春流」に着目

『扶桑風韻』第3号 秀作  佐藤 武司

   春草
細雨無聲罩遠山 細雨[さいう][こえ][な]
遠山[えんざん]を罩[こ]
籬邊花落一庭閑 籬辺[りへん][はな][お]ちて
一庭[いってい][かん]なり
偏憐寸草勝苔碧 [ひとえ]に憐[あわれ]む 寸草[すんそう]
[こけ]の碧[みどり]なるに勝[まさ]るを
童子莫蹂旬日間 童子[どうじ] 蹂[ふ]む莫[な]かれ
旬日[じゅんじつ]の間[かん]

吟詠教本の中の北条時頼作「春流」「春流高于岸。細草碧于苔。小院無人到。風来門自開の細草、苔よりも碧なりに着目。五言を七言とするため、「常用句法教本」(服部承風編)から下三字に返り点のある用例を参考に「時知寸草勝苔碧」を作る。句頭の二字「時知」は情感が伝わらない虚字との指摘を受ける。

まず「愛看」とするが再考、「憐」「憐愍」から憐むのイメージが強いが、いつくしむ、めでるの意味があるので、「偏憐」に改め「偏憐寸草勝苔碧」を転句とする。

この美しい春草も伸びれば雑草となって抜き取られる。せめてしばらくの間は子供達が来て踏み荒らさないでほしい。この願いを結句に表わすこととする。しばらくの間は「週日」「旬日」などの語のうち中国語の発音が滑らかな「旬日」を採用、「童子莫蹂旬日間」を結句とする。

結句の韻字「間」の字が属する刪の韻目から、起承で景の描写が可能な韻字「山」「閑」を選んで起句は遠景、承句は近景として「細雨無聲罩遠山。籬邉花落一庭閑を作り一首を完成した。