(2007年08月15日)

なつかしい童謠

『扶桑風韻』第4号 秀作  佐野 佐喜子

    雁          [がん]
西風渡野夕陽收 西風[せいふう][の]を渡[わた]
夕陽[せきよう][おさ]まり
漠漠長天雲影流 漠々[ばくばく]たる長天[ちょうてん]
雲影[うんえい][なが]
旅雁思ク千里去 旅雁[りょがん] 郷[きょう]を思[おも]いて
千里[せんり]に去[さ]
荻蘆江上一聲秋 荻蘆[てきろ] 江上[こうじょう]
一声[いっせい]の秋[あき]

この度、全日本漢詩扶桑風韻の4号「禽又鳥」に応募させて頂き、幸いにして秀作に選ばれましたことはこの上も無く光栄です。

鳥ということで先ず何の鳥を詠もうかと考えました。身近な鳥といえば雀、燕等です。詩題を頂いたころは燕は丁度雛のかえる頃でした。しかしその愛らしさをどう表現したら良いか解りません。古人の詩も知りません。困って朝夕よく見る鳥も考えてみましたが、日本と中国では鳥に対する考えが随分違っていてなかなかイメージが湧きません。

そんな時子供の頃に歌った懐かしい童謡を思い出しました。「雁、雁、竿になれ、鍵になれ」と楽しかったあの頃を思い出し詠ずる鳥を雁と決めました。雁については名詩も多く「思郷」の二字で読む人の心の中に様々なイメージの湧くことで私の詩の不足な処をカバーできるのではないかと考えたのです。

まだ使えこなせないパソコンですが調べてみると、雁は渡り鳥であること、孤雁又は番い群れとなって千里も飛んでくることが書かれていました。大空を風に乗って飛来し、羽根を休め餌を啄ばむ安らかな姿から、又北へ帰ってゆく日の直ぐ来ることを思うと、何かそこに悲しいものを感じないではいられません。雁の姿を考える中に雁の居場所、風、天、雲など次々とその景が浮かんできました。

そして迷わず結句の下は「一声の秋」としました。私の心の中には子供時代の木曾谷の秋の景色と「思郷」「悲秋」があり一詩をまとめることが出来ました。

5月12日の二松学舎大学の会場に於いて、服部承風先生の詩作に対する心構えの講義を拝聴し、又各先生方の話されることの一ツ一ツが心に響き、漢詩の奥の深さに改めて一層の勉強をすることを心に誓って帰りました。