(2008年07月01日)

旧詩を敲いて

『扶桑風韻』第5号 優秀作  田原 健一
     曉 湖
山脚風吹曉霧消 山脚[さんきゃく]風吹いて 暁霧[ぎょうむ]消え
湖心時望小舟漂 湖心[こしん]時に望む 小舟の漂うを
半孤放散打魚網 半孤[はんこ] 放散[ほうさん]
打魚[だぎょ]の網[あみ]
捕得日輪波上跳 [とら]え得たり日輪[にちりん]
波上に跳[おど]

書斎の机の左の抽斗には、過去の苦吟の残骸が埋まっている。兼題の「光」に応募するにあたって、適当な材料はないかとこの抽斗を漁った。拾い出したのが、「暁湖」の元の原稿である。

結句は最初「落處 輝光 砕日揺」となっていた。指示する窪寺先生から〈日を砕いて揺れる〉とはどう言う意味か不明、「飛沫 発光 閑寂邀」ではどうかとの指摘を受けた。本人としては投網が朝日を捕まえている状況を説明、先生から幾つかの言葉を頂いて再考するようにとの指導を得た。

また独りよがりであったかと反省、未完成として机の左の抽斗に入れた。2年程前の事である。

応募を前に今一度考えた。「飛沫発光」の先生の添削が私の見た河口湖の情景にぴったりでこの言葉からなかなか離れられず、いつもの如く諦めかけた。

夜の寝床の中で閃いた。「光」は無しで良いのではと。一字を節約出来たことで、後はすんなりと朝日を魚に見立てて「波上跳」と言うこなれた下三句を得ることができた。僥倖であった。

「詩は無形の絵であり、絵は有形の詩である」という言葉がある。私なりの形の無い絵が描けたかなと言うのが作後の感想である。

最後に、この受賞は、この9年間、厳しく暖かく育てて頂いた窪寺貫道先生のご指導のお陰であり、改めて感謝の意を捧げたい。