(2009年02月15日)

承句のイメージから

全日本漢詩連盟会長賞  酒井謙太郎

   櫻花頌   桜花頌
誰ヘ山野發香葩 誰か山野をして香葩[こうは]を発[ひら]かしむ
郭北郭南花又花 郭北 郭南 花又た花
三月旬餘抛世累 三月旬余 世累[せるい]を抛[なげう]
田夫吾亦醉流霞 田夫吾も亦た 流霞に酔わん

春三月、野に山に街のあちこちに櫻花が一斉に開く。わが國が最も美しい時節であり、私の好きな風景の一つである。

このイメージをうまく表現できないかふと「郭北部南花又花」の一句が頭に浮かび、後は比較的スムースにまとめることが出来た。

「醉流霞」については、石川忠久先生が著書の詩評の中で「流霞は仙人の飲みものの美称だが、酒に醉ったことと花の幻想的な美しさに醉ったこととをふたつながら表している」と書かれているのを思い出して、結びとした。(李商隠「花下醉」「尋芳不覺醉流霞」の註)

齢八十近くになって詩作を始めた超晩学の私には、この受賞は望外の喜びである。

このところ、あれこれ推敲や修正を加えても良い詩と成らず嘆くことが多い。今回、感覚的に書き流した感のあるこの詩が図らずも入賞して驚くとともに、あらためて詩作が難しいことを認識した次第である。これを機に思いを新たにして取組んで行きたい。