(2009年02月15日)

福沢諭吉「惜花」をヒントに

水戸市長賞  田中久治

    聞 蟲
婆娑竹影上階新 婆娑[ばさ]たる竹影[ちくえい] 
  階[かい]に上[のぼ]りて新[あら]たなり
籬落候蟲聲自親 籬落[りらく]の候虫[こうちゅう] 
  声[こえ][おのず]ら親[した]しむ
靜對村醪明月夜 [しず]かに村醪[そんろう]に対[たい]す 
 明月[めいげつ]の夜[よる]
聽秋人是愛秋人 [あき]を聴[き]く人[ひと]は是[こ]れ 
  秋[あき]を愛[あい]するの人[ひと]

今回の拙作の結句は、福沢諭吉翁「惜花」「節物忽々留不止/惜花人是戴霜人」を踏まえたものです。

結句の冒頭「聴秋」については、野田笛浦「昌平橋納涼」「篭中一担売秋声」とあり、その「秋声」をヒントにしたものです。

転句については、最初は月夜に複数で聴くか、独りで聴くか迷いましたが、先ず複数で聴くことにし、「喫茶」「飲酒」等を想察して結局「飲酒」を採り初稿を得ましたが、服部承風師の「未だ推敲が足らない」とのご叱声により、幾度か推敲を重ねるも『結句』のイメージに合わず一番苦辛致しました。

今度は発想を変えて独りで聴くことに改めましたが「独・酒・月・虫・秋」となるとどうしても寂しげな情景になってしまうので、何んとか秋の静かで清らかなイメージを少しでも表現出来たら「愛秋人」に絡がるのではないかと、試行錯誤の末に「静対村醪明月夜」としました。

起句は転句の「明月夜」を踏まえて「竹影」で景を叙し、承句は結句の「秋」を踏まえて「候虫」とし、情を絡ませてまとめてみました。

国文祭いばらき二〇〇八文芸祭「漢詩大会」に於いて、図らずも入選の栄を戴きましてありがとうございました。

先ず以て恩師の服部承風先生に感謝申し上げますと共に、全漢連会長、石川忠久先生ならびに、大会実行委員の諸先生に心より感謝致します。

今後もこの賞を励みとして、更に精進致したいと思っております。