(2010年02月15日)

転句はむずかしい

栃木県漢詩連盟会長賞  薄井 隆
   寒 月  寒 月[かんげつ]
寒威凛烈冒衾前 寒威[かんい] 凛烈[りんれつ]として
 衾前[きんぜん]を冒[おか]
風響敲軒斷快眠 風響[ふうきょう] 軒[のき]を敲[たた]きて
 快眠[かいみん]を断[た]
乍怪未晨閨幽皎 [たちま]ち怪[あや]しむ未[いま]
 晨[あした]ならざるに閨幽[けいゆう]の皎[しろ]きを
玲瓏既望占中天 玲瓏[れいろう]たる既望[きぼう]
 中天[ちゅうてん]を占[し]

この度の全日本漢詩大会において、図らずも私の拙い作品が特別賞を受賞させて戴きました。全く望外のことであり、喜びよりも驚きの方が大きいというのが率直な気持ちですが、漢詩を始めてから五年余り師事してきた今は亡き先生に、この受賞によって少しは恩返しが出来たかと嬉しく思っております。

さて、「月」という非常に普遍的な課題でしたので詠み易い反面、単に風情があるというだけでは特色を出し難く、どんな月を詠んだら良いのか大いに迷いました。

あれこれ模索した挙句、様々な月の中でも特に鮮烈な印象の残っていた、厳冬の早暁の空に皎々と輝いていた寒月を詠むこととしました。

起句と承句は型通りの舞台設定であり、結句は窓から仰ぎ見たそのままの情景ですが、それを転句でどう結び付けるかに苦心しました。まず上二字には「驚」「訝」を含んだ詩語を検討したり、「何事ぞ」なども考えましたが、結局、「怪しむ」に落ち着きました。この表現がその時の私の心に最も適っていたようです。

また、転句が長過ぎて冗漫になってしまい、もう少し簡潔な表現を工夫しなければ、という反省が残りました。これではさぞかし吟じ難いのではないかと懸念されましたが、十月十七日の表彰式では見事に吟詠して戴き、大変感動致しました。

この受賞を機に更に精進すると共に、これからも奥の深い漢詩の世界を大いに楽しみたいと思っております。