(2010年02月15日)

独学のイヤミを消して

神奈川県漢詩連盟会長賞  若林海司

   陋巷中秋  陋巷中秋[ろうこうちゅうしゅう]
陋巷黄昏若下帷 陋巷[ろうこう]の黄昏[こうこん]
 帷[い]を下[くだ]す若[ごと]
天沿狹徑月遐窺 [てん]は狭径[きょうけい]に沿[そ]
 月[つき][とお]く窺[うかが]
貧家亦有中秋夕 貧家[ひんか]も亦[ま]た有[あ]
 中秋[ちゅうしゅう]の夕[ゆうべ]
敝幌通暉睡二兒 敝幌[へいこう] 暉[き]を通[とお]して
 二児[にじ]の睡[ねむ]

漢詩に親しみはじめたのは中学生の頃ですが、本格的に詩作を試みたのは昨年夏。入会したばかりの漢詩連盟・桜庭先生のご厚意で手紙による手ほどき、ご批正を頂きました。

しかし出来の悪い生徒は結局、独学の域を越えられませんでした。ですから自己流のコトバが頻出します。今回の作でいえば、「帷を下す若し」なんて、こんな意味で使っていいのでしょうか。どうやらかまわないようですが、まだ半信半疑です。

自作についてですが、すべて実景です。さすがにアパートは藤沢周平風の長屋にアレンジしましたけれど、詩的誇張はありません。

長屋の夕方たちまちまっくら/路地のお空は細くて長い/それでもお月さまいらしてくれる/太郎次郎寝顔を照らしてくれる

所帯を持ってから毎晩友人たちが一間きりのアパートを訪れ、飲んで騒いで泊まっていきました。子が生まれても変わりません。客の来ない夜はしんとして、二段ベッドに眠る二児を月がのぞきこみます。アンデルセンの「絵のない絵本」です。

こういう幸福な貧乏は、日本中から払底してしまったようです。

貧を満載したような詩ですけれども、自分ではすんなり出来たこともあって気に入っています。これからも独学特有のイヤミがない詩を裁することができたらいいのですが─。