(2010年02月15日)

理想的な月光の風景を

東京都漢詩連盟会長賞  村瀬虚風

   秋夜山居  秋夜山居[しゅうやさんきょ]
捲盡風簾月一鉤 [ま]き尽[つ]くす風簾[ふうれん]
 月一鉤[つきいっこう]
階前寂寂露華浮 階前[かいぜん] 寂々[せきせき]
 露華[ろか][う]かぶ
休言老衲無知己 [い]うことを休[や]めよ
 老衲[ろうのう] 知己[ちき][な]しと
占斷C光山寺秋 清光[せいこう]を占断[せんだん]
 山寺[さんじ]の秋[あき]

この度の課題の「月」は、あまりにも広くてなかなかイメージが絞れませんでした。

どんな形の月か、場所はどこが良いか、どの様に照らしているのか。一番難しいのは現実に即した描写にするのか、逆に理想を取り込んだものにするのかに迷いました。

結局、今回は真正面から、いっぱいの月光を浴びている山寺の風景が理想として結句にまず浮かびました。

「占断清光山寺秋」という形象です。

その前段階の転句を「柴門半掩閑欹枕」としましたが、少し平凡に思って虚字を使って「休言老衲無知己」という句を得ました。

浮き世を離れている老衲の寂しさと、まさにその寂しさの中に満足しようとしている心理状態を出したかったのです。

服部承風先生は転句の重要性を強調されますが、起・承句からの転換と結句を生かす表現を得るのに常に苦心しています。

起・承句では老衲の具体的な看月の描写をしました。簾を捲き上げると爽やかな秋風と月影。その光に照らされて冷たく浮かぶ庭の露の寂けさ等を出せたかどうか…。

この度、図らずもこの様な賞を賜わり感謝の念でいっぱいです。今後も精進していきますので宜しくお願いいたします。