(2009年09月05日)

江戸に縁りの詩」が面白い

平成21年度東京都漢詩連盟総会

東京都漢詩連盟の平成21年度総会は、9月5日、二松学舎大学九段校舎で開かれた。三十名の会員が集い、事業報告、会計報告などを審議、可決したあと、石川忠久顧問の講演「江戸に縁りの漢詩」に耳を傾けた。

梁川星巖、阪谷朗蘆、尾臺榕堂、川口江東、山内容堂、大沼枕山などの漢詩が取り上げられ、くわしく紹介された。たとえば、山内容堂について─

   墨水竹枝七首  其七
紅幕珠廉樓又樓 紅幕 珠廉 楼又た楼
楼臺此處小楊州 楼台 此の処 小楊州
毬燈一點自南至 毬灯 一点 南より至る
伊軋知他送妓舟 伊軋 知る他(か)の妓を送るの舟

「紅幕・珠廉」は対語。立ち並ぶ川沿いの酒楼に紅い幕や美しいすだれがかかっている。こういう風情は楊州のようだ。唐の時代、楊州はこのように賑やかだった。これは杜牧の詩を介して知識として知っていたわけです。

毬灯の毬はまり。丸い灯を毬のように丸いという方が色っぽい。伊軋はギコギコと舟を漕ぐ音の形容。「他(か)の」の他は添え字。この字はなくてもよく、意味もない。

王維の詩に「白眼看る他(か)の世上の人」という句と同じ用法。ギコギコと舟を漕ぐ音を聞いて、これは芸者を送る舟だと分かった。芸者を載せている舟だから、まるい色っぽい明りがついていて、南の方からやってきた、という情景です

川口江東については─

   深川竹枝
郎恩淺似淺草淺 郎の恩 浅きこと浅草の浅きに似たり
妾怨深於深川深 妾が怨みは 深川の深みより深し
若教恩怨無深淺 若し 恩怨をして深浅無からしむれば
便是郎心如妾心 便ち是れ 郎が心は妾が心の如し

このように地名をうまく使うのは、一つのアイデアです。後半は女性の立場から詠っている。竹枝というのは大体このように女性の立場に立って詠うものが多い。ここでも女性がともかく心変わりしがちな男を責めている。

あなたの私に対する恩愛なんて、浅草よりも浅い。私の怨みは、深川の深みより深い。うまいこと言うものですね。

もし郎の恩が浅く、私の怨みがないようにするならば、あなたの心は私の心と同じだ。結論はあまり面白くないけれど、地名をうまく使ったところは面白い

この講演は東京都漢詩連盟会報「江都清興」第8号に全文が掲載されている。大変面白いので、ご一読をおすすめする。

東京都漢詩連盟総会